日本臨床心理劇学会大分大会の開催に当たりごあいさつ申し上げます。

第45回日本臨床心理劇学会大分大会

大会会長 金子 進之助

昨年の沖縄大会のテーマは「心理劇の新たなステージ」でした。これを受けて大分大会ではこれまでの心理劇をさらに発展させるとともに、次代を担う子どもたちの成長・発達に寄与する心理劇を考え、「子どもの世界と心理劇」というテーマにしました。心理劇以外にも子どもの世界に関わる方は多くいらっしゃいます。その方方との交流もおもしろいものが発見できるのではないでしょうか。さいわい著名な書道家の荒金大琳先生に講師をお引き受けいただくことができました。先生は、書道家としても有名な方ですが、ご家族や学生達とともに、幼稚園や、児童養護施設で書道を指導しておられます。「書のあそび」と題して子ども達と関わり子ども達に道の体験を提供しておられます。先生の実践を伺うことが、心理劇と子ども達の関わりに新しい発見をもたらすことを願います。

 

ご承知のように心理劇を始めた人はジャコブ・レビイ・モレノです。モレノは子どものころ天使になったつもりでほかの子どもたちの前で椅子にのぼり、飛び降り損ねたというエピソードを持っています。私が思うにモレノはこの時の子どもの心を持ち続けた人ではなかったかと思います。彼は交流分析でいうFC つまり自由な子供の心を多分に持った人だったようです。

 

本来子どもは幼児期には好奇心や万能感を持っています。子どもの時代こそモレノが大事にした、自発性創造性をより発揮していますし、自発性創造性を発揮する体験が必要です。

 

一方、現代では、癒されたり安心感を再確認したりすることが必要な子どももいます。そのような子どもたちには、他人を信頼することを体験できることが必要です。人を信頼し自分の存在を確認できる、そのような体験の場としての心理劇も求められています。

 

人と人との関係の取り方を学ぶ劇、楽しみや愉快なことを劇にする。世の中のルールを考えるなど、心理劇の子ども達に対して寄与することは多いと思います。

 

今後、子ども達との心理劇実践が多くなされて、子どもの世界を理解したり、広げていくことができることを願います。